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札幌高等裁判所 昭和25年(ネ)41号 判決 1951年5月08日

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は、原判決を取消す、被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とするとの判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

(立証省略)

理由

北海道中川郡池田町字高島九十五番地の内畑一町歩は控訴人が北海道旧土人保護法第一条により国から無償で交付を受けた農地であるところ、控訴人がこれを含めて農地五町歩を訴外永井孝雄に賃貸していた事実、控訴人が同人を相手方として釧路地方裁判所帯広支部に小作調停を申立て昭和二十二年二月二十五日前記一町歩について控訴人と同人との間の賃貸借を合意解除し同人は直ちに右土地を返還する旨の調停が成立し控訴人が直ちに右土地の返還を受けた事実及び控訴人が昭和二十三年五月七日被控訴人に対して農地調整法第九条第三項による右土地の農地の賃貸借の解約許可申請をし、これに対して被控訴人が同年七月三十一日子調整第三六二九号指令をもつて不許可の処分をし、右指令書が同年八月十三日控訴人に送達された事実は当事者間に争がない。ところで、右小作調停が成立した当時施行の農地調整法第九条第三項、附則第三項によると、農地の賃貸借の当事者が賃貸借の解除若は解約をし又は更新を拒もうとするには地方長官の許可を受けなければならなかつたところ、その後昭和二十二年十二月二十六日法律第二百四十号による同条改正規定によると、農地の賃貸借の合意解約についても同様許可を要することとなつたことが明らかであるから、本件小作調停による賃貸借の合意解除については知事の許可を要しなかつたものといわなければならない。従つて控訴人と永井孝雄との間の前記一町歩についての賃貸借は右小作調停によつて終了したものであり、その後に至つて上述のとおり賃貸借の合意解除について知事の許可を要することとなつたとしてもすでに終了してしまつている賃貸借について遡つてその合意解除につき知事の許可を要するいわれがない。ゆえに右賃貸借の合意解除について控訴人のした本件許可申請は不適法としてこれを却下すべきであつたのにかかわらず被控訴人がその許可を要する前提の下に右申請の当否を審査した上不許可の処分をしたのは他の争点について判断を加えるまでもなく違法であつて、これを取消すべきものといわなければならない。原判決が、本件賃貸借解約許可申請がなされた当時の農地調整法第九条第三項では小作調停においてなされた農地賃貸借の合意解約について知事の許可が必要であると解したのは、前説明のとおり、不当であるけれども本件不許可処分を違法であると判断して、これを取消したのは結局相当である。よつて、行政事件訴訟特例法第一条、民事訴訟法第三百八十四条第二項、第八十九条、第九十五条を適用し、主文の通り判決する。(昭和二六年五月八日札幌高等裁判所第二部)

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